風間家<3>


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とある日曜の昼下がり。
恋愛小説片手に、何やら物思いに耽る紗矢香。





「あの子、佑輔くんって言ったかしら…けっこう良い子だったな」

学校帰りに長良家に訪問した日(長良家6話参照)から数日。
あれから無性に年下の少年が気になる様子。
この気持ちはなんでしょう!





「せっかく休みだし、電話でもしてみるかな…」

思い立ったら即行動!
プルルルルル

「もしもし、佑輔君?紗矢香ですけど」
「特に用はないんだけど…そだ、来週の球技大会のことで」
「ほら、この前はキミが何に出るのか聞いてなかったから…」

もどかしい会話のさなか、彼女の背後には全裸の兄の姿が!
しかも不敵な笑みまで浮かべて…

愁「(サヤちゃんの電話の相手は誰だ?)」





しかし、不審な兄の姿には気づかない妹。

「あたしはテニスで参加するの。やったことないけどね(笑)」
「え、やったことあるんだ!じゃ教えてくれない?」

見事に口実を見つけ、佑輔を呼び出すことに成功。
そんな紗矢香の後ろでは、愁と唯月がシュールに盛り上がり中。

愁「俺もやろうかな!マッパで逆立ちしたことねーし」

んなもんやらんでよろしい





佑輔はすぐに来れるとのことなので、ソワソワ待機中。

「なんならチューくらいしちゃおうかしら!うふふん」

すっかり恋する乙女モード入ってます。でもパジャマ。
そうこうしてる間に、佑輔がやってきました。





 佑輔「あっ、先輩、どうも…ご招待ありがとうございます」
紗矢香「ううん、こちらこそ。よく来てくれたわね」
 佑輔「(今日はパジャマ…?先輩は服に拘らない人なんだな)」

キミに言われたくないとおもうよ!





紗矢香「キミさ、その『先輩』っていうのやめてよ」
    「紗矢香って、名前で呼んでくれていいから」
 佑輔「そ、そうですか。じゃあ、紗矢香…さん」
紗矢香「あぁ、あと敬語も禁止!こっちが落ち着かないわ」
 佑輔「それじゃ紗矢香さんも『キミ』っての禁止で」

…凡庸な青春恋愛ドラマにありがち〜な会話ですね

 佑輔「そういえば言ってなかったけど」
   「私立校に入学できることになったんで、学校変わるんです」
紗矢香「そうなんだ…実はあたしも私立に行きたかったんだけど」
    「これを機に、校長呼んでもらっちゃおうかな」





 佑輔「これを機に?それって、どういう…」
紗矢香「あっ、いや、その…佑輔君と同じ学校に通えるなら、って」
 佑輔「………」
紗矢香「………」
  
♪シャリラリラ〜〜ン♪

ポワワ〜〜ン(*゚∀゚*)

紗矢香「と、と、とにかく!こんなとこで立ち話もナンだから!」





場所を庭のバルコニーに移したところで、夜になってしまいました。

「(よく考えたら、まだお互いのことよく知らないのよね)」
「(それなのに好きになっちゃうなんて…)」

ちょっぴり葛藤を抱え、はやる気持ちをやっと抑える紗矢香。

紗矢香「ね、あたしたち親友よ。キミはあたしの大切な人」
 佑輔「もちろん、僕もですよ。それより『キミ』は禁止でしょ」
紗矢香「あ〜、ゴメンゴメン。てか佑輔君も敬語禁止だってば!」





「(本当は親友どまりじゃなくて、付き合いたいんだけどな)」
「(紗矢香さんは、僕とはただの親友でいたいのかな)」



「…あたしたち、親友だけど、恋人にもなれる?」
「…なれますよ。てか、僕がなりたい。お願いします」
「あはは、佑輔君にお願いされちゃったら、断れないね」

佑輔が長いこと描いていた、淡い淡い夢。
いまこの瞬間、ついに現実のものとなりました。





とりあえず落ち着こう、ということで、ベンチに座ってみた。

紗矢香「パジャマで外に出るような女でもいいの?」
 佑輔「いいけど風邪ひきそうだから、これからはダメです」
紗矢香「そっか。それじゃ、やめといてあげる」

なんともこそばゆい雰囲気の中、そっと寄り添う2人。
そして、初めての口づけを…






                !?









              !!!!!


妹に訪れた春を、2階のベランダから 全 裸 で 見守る兄…
シスコンもここまでくると犯罪級のキモさ

愁「………」





「OK!ワーントゥースリーフォー」
「ヘイ!マーイ・スウィィーートォ・スゥィスタァァーー!」

何やら歌いながら、おもむろに踊り出しちゃった!

「サヤちゃんの幸せを願って!朝まで踊り明かすぜぇぇ!!」















すっかり2人の世界に入っている彼らは、
まさか後ろで変態が祝福の舞を舞っているなど知る由もなく。

 佑輔「(あぁ、なんだか夢見てるみたいだ)」
紗矢香「(キスの味って、こういうものだったのねぇ…)」





踊っていた愁は、あまりの開放感に我を忘れ、
雑用のために息子を探していた志鶴に発見されて大目玉。

志鶴「まあ!貴方そんな恰好で…一体どういうつもりなの!」

そりゃ、さすがに普段は温厚な母もこれには怒るでしょうよ…
朝まで踊り明かす計画、即頓挫。





知らない方が幸せなことは、世の中いくらでもあります。
紗矢香と佑輔が、甘い時間を裸踊りに壊されずに済んだのは幸運。
ファーストキスも済ませ、彼らは今日から恋人です!

紗矢香「あたしたち、最高のカップルになりましょ」


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