風間家<6>


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ゆとりと変態とが交錯する、混沌の風間家。
今日は見慣れない客人がやってきました。





「毎度おおきに!つってもお客サン初めてやったな」
「ワシは『有限会社 獄門ツーリスト』執行部の死神いいます」
「ツーリストいうても片道しか売っとりまへんけどな〜。はっはっは」

ネタがシュールすぎて笑えません。てか何の用だ!





「ほっほぉ、今日はこの嬢ちゃんでっか」

死神は紗矢香を迎えに来たようで…
ショックを隠せない様子の御影と愁。唯月はキョトン。
ちょっと紗矢香、何やらかしたのよ?!





御影「イヤぁぁぁ!お願いします紗矢香を連れてかないで!!」
死神「またかい。どこの家族も大概おんなじこと言いよるわ」
 愁「サヤちゃん連れてくとか、俺が許さねえ。まず俺を殺せ」
死神「あ〜、ニイちゃんはいらん。自分から刺さってきてもあかん」

愁、ショックと怒りのあまり自らの頭を鎌に。
しかも貫通してます。





 愁「いいから俺を殺せっつってんだ。聞いてんのかコラ」
死神「いらんモンはいらんねん。ええから早よ仕事させてくれ」
   「ネエちゃん、この嬢ちゃん執行許可下りとるし、連れてくで」
御影「イヤ!ダメ!ムリ!なんとかならないの?お願いします」

必死に頼み込む御影。愁は相変わらず刺さったままです。
死神、ちょっとウンザリの後姿。





死神「しゃーないな。ほないっぺんだけチャンスやるわ」
   「コレ嬢ちゃんの魂な。若いだけあってキレイなもんや」
御影「これが紗矢香の……どうするつもりよ?」





「ワシが魂をどっちの手に持ってるか、当てたら返したるわ」
「社内規定で決まっとんのや、ホンマにいっぺんだけやで」





妹の命運をその手に委ねられた御影。
プレッシャーどころの騒ぎではありません。

「どっち…?どっちに入ってるのよ…」

失敗したら紗矢香は帰ってきません。
頑張れ、姉ちゃん!

「…決めた。右手よ。右手に入ってるわ」





死神「決まったようやな。ほなええか、開けまっせ」

そして開かれる死神の両手。
それを見た瞬間、御影の両腕が上がりました。
緊張しすぎてたせいか、顔が間抜けだ…





御影「っしゃあああああー!!!」

ものすごい気合いの入ったガッツポーズ。
紗矢香の魂を、死神から見事に取り戻すことができたのです。

御影「ほーら見なさい、私の勝ちよ!さっさと紗矢香を返して」
死神「あちゃー、しくったなぁ」





「まあ約束は約束やしな。今戻したるさかい、待っときや」

死神が溜息まじりに何かを呟くと
ゆらり、と紗矢香の体が浮き上がり…





紗矢香「うわっ、あたし生き返ったのよね?!」
 死神「せやで、せいぜいネエちゃんに感謝しときなはれ」

三途の川を渡ることなく、無事に紗矢香が戻ってきました。

死神「あ〜あ、また顧客管理部にどやされるわ。かったる〜」





紗矢香「やったわ…すごい!あの噂は本当だったのね」
 死神「噂?なんやねんソレ」
紗矢香「死神が来ても、生きてる誰かが頼めば生き返れるんだって」
    「成功率は半々だから、絶対に試すなって書かれてたけど」
 死神「…嬢ちゃん、まさかその噂とやらを試しただけちゃうやろな」
紗矢香「だって、信憑性のない話こそ実証したくなるじゃない!」
 死神「……やっぱりアンタ連れて帰ってええか?」

紗矢香(知識願望)の望み:死の淵から助かる +8000
ええ、おかげさまでいまの紗矢香さんプラチナです





紗矢香が死にかけた理由など知る由もない御影。
とりあえず、大仕事で乾いた喉を潤すことに。

「あ〜もう、私の寿命が縮まるかと思ったわ」

あ、昼間からビール飲んじゃったよ。





ところで、家に入ってからも窓から一部始終を覗いていた唯月。
死神に興味津々だったようです。

唯月「ねえねえ、死神って何する人なの?」
少女「うーんと、死んだ人をあの世に連れてっちゃうのよ」
唯月「そうなの?あの世に行ったらどうなっちゃうの?」
少女「わかんないけど、幽霊になったりするみたいよ」
唯月「ふーん…(サヤちゃんはなんで幽霊じゃないのかな?)」

紗矢香が生き返ったことが不思議でならない様子の唯月。





「(さっきのが死神だよね…ちょっとおしゃべりしたかったな)」
「(顔がないのとか、体が透けてるのとか、いろいろ訊かなきゃ)」

なんか、唯月もちょっとアヤシイ方向に進みそうですね…
一番仲の良いきょうだいが紗矢香だからいけないのか





「三途の川も見られたし、今度は宇宙人に会わなくっちゃ」

懲 り な い ヤ ツ が い ま す

もう好きにしてくれ…





こちらは、昼酒で調子の良くなった御影。
執筆活動にも精が出るってもんです。

「私、死神に勝っちゃった…うふふふっ」
「こんなすごい経験、書かないわけにいかないわよね」

4人姉弟の中で一番マトモなのって、御影さんなのかもしれません…


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